6

産後6か月目以降の授乳

長期的なメリットの構築

この頃になると、固形食を食べ始めるために赤ちゃんに最初の歯が生え始めます。しかし、授乳をやめる準備ができたわけではありません。スクロールしてもっと読む

世界保健機関は、最大2年間またはそれ以上の期間、補完食と共に授乳を続けることを推奨しています。¹⁵⁹


事実、これが子どもの最初の歯が「乳歯」と言われる理由です。進化的に卒乳の年齢には最大7年間の差があり、これは子どもが最初の歯を失い始める時期と一致します。¹⁶⁰


昔は、それくらい授乳を長く続けるべきとする正当な理由がありました。考古学者は、消滅した中世のイングランドの村から発掘された乳児の骨を分析することで、人々が栄養失調で水が汚くても母乳育児であれば、そこに住んでいた子どもが今日のイギリスの子どもと同じ割合で十分に成長していたことを発見しました。一般的には18か月目前後、授乳を一旦やめると、赤ちゃんの成長は遅くなり、多くが病気になります。¹⁶¹ 母乳は赤ちゃんを守っていたのです。

今では、授乳の延長は長期的な健康を守り続けるということを、多くの研究が証明しています。鉄分、亜鉛、ビタミンBおよびDなどの栄養素の貯蓄を増やすのを助けるために、¹⁶² 赤ちゃんは6か月目以降に固形食を始める必要がありますが、このような食べ物は母乳に置き換わるものではなく母乳を補うものです。 


家族の食事に参加するようになっても、その後の長い期間、赤ちゃんは母乳から栄養の多くを摂取し続けます。7か月目では、赤ちゃんのカロリーの93パーセントが、11~16か月目の間は日々のカロリー摂取量の約半分が母乳から提供されます。¹⁶³


お母さまが住んでいる場所や裕福か貧乏かに関係なく、長い間授乳することで、赤ちゃんを下気道感染、耳の感染症、下痢、1型糖尿病および肥満から赤ちゃんを守り続けることになります。¹⁶⁴ 6か月以上の授乳は、急性リンパ性白血病やホジキンリンパ腫などのがんから守ってくれると考えられています。¹⁶⁵

しかし、6か月目以降の授乳は、赤ちゃんが小さかった頃にしていたように1日に10~12回授乳することを意味するわけではありません。授乳をいかにライフスタイルに合わせるか、どのくらい続けるかは選ぶことができます。寝る前と朝一番の時間帯、もしくは仕事から帰ってきてすぐに授乳するというお母さまもいます。それは、赤ちゃんが可愛くてたまらない瞬間でもあります。いずれにしても、成長している赤ちゃんに母乳だけが与えることのできる防御的、健康的メリットを続けて与えることになります。 


また、そのメリットは赤ちゃんのためだけではありません。長く授乳するほど、お母さまが乳がん、子宮がん、卵巣がん、心臓疾患、脳卒中、2型糖尿病になる確率が減少します。さらに、ある研究では、お母さまのBMIが授乳をしている6か月間毎に1パーセント低下することが示されています。¹⁶⁶


6か月目以降は母乳育児が本当に便利な選択肢になる時期です。母乳であれば準備も必要なく、忘れ物も減りますし、殺菌が必要な道具もありません。乳房が妊娠前のサイズとほぼ同じくらいに戻ってきているかもしれませんが、それでも経験を積んだ効率の良さで必要な量の母乳を出します。¹⁶⁷


また、すでに職場に復帰しているか、まもなく復帰する場合は、赤ちゃん(とお母さま)が長期的なメリットを構築し続けられるように母乳をさく乳することもできます。

知っていましたか?

母乳は長持ちします

さく乳した母乳は、身体から離れても長い間殺菌作用が持続します。実際に、腐敗を防いでいます。


実験では、室温で最大4時間または冷蔵庫に3日間置いていても、母乳は健康的な正期産児が飲むには安全であることが示されています。¹⁶⁸ びっくりですね。

アメリカ公衆衛生局の推定では、最初の一年間授乳することで、親は1,200米ドル~1,500米ドルという途方もない金額を節約することができます。¹⁶⁹