連鎖反応: 母乳のトリガーとなるオキシトシン

お母さまの身体の中で複雑なカスケード型の相互作用が起きることで、お母さまは新生児に母乳を飲ませて、赤ちゃんを守ることができます。このプロセスは、妊娠や出産と同じくらい素晴らしいことで、オキシトシンというホルモンに依存しています。


「愛情ホルモン」とも呼ばれることが多いオキシトシンは、授乳時にいつもお母さまの脳と赤ちゃんの脳で以下のように分泌されます。⁴⁸


  1. 赤ちゃんの吸いつきが乳首と乳輪周りの触覚受容体を刺激します。

  2. この接触が刺激を脳下垂体に送り、これがオキシトシンを分泌します。

  3. 次に、オキシトシンは母乳が溜められている腺房の周囲の細胞を刺激します。

  4. 刺激された腺房は収縮し、乳管を通じて母乳を乳首へ押し出します。


オキシトシンは愛情、幸福、平静などの感情を強く刺激するだけでなく、お母さまと赤ちゃんの両方の痛みに対する感受性を低下させ、傷の治りを促し、ストレスを減らして、血圧を下げることが示されています。⁴⁹ 母乳育児が一旦確立すると、お母さまを見たり、お母さまの匂いをかいだり、お母さまの声を聞いたりしたときはいつでも、赤ちゃんの脳がオキシトシンを分泌するため、このようなときも気持ちよさを感じます。⁵⁰


オキシトシンはまた、出産という普通では考えられない偉業からの回復の役割も担っています。新生児が早くから頻繁に吸いつくと、これが子宮収縮を促します。これは出産の「第3のステージ」を促進し、胎盤を押し出すことで、過剰な出血を防ぎます。⁵¹ 翌日以降も直接授乳を続けることで、オキシトシンが子宮が元の大きさに収縮して戻る手助けをします。⁵²


この素晴らしいホルモンは、お母さまと赤ちゃんの結びつきを助けるうえで不可欠な役割も担っています。母乳育児のお母さまは粉ミルクのお母さまよりもオキシトシンのレベルが高く、研究者たちはこれをアイコンタクト、愛撫、愛情深い声掛けが多い、反応が速いなどの育児態度の改善と結び付けています。⁵³


オキシトシンには抗うつと抗不安の性質があり、産後うつを防ぐことができる可能性があります。⁵⁴ ある研究では、オキシトシンのレベルが高いお母さまほど不安やうつの症状は見られませんでした。⁵⁵ しかし、メンタルヘルスは単一のホルモンよりもはるかに複雑であり、授乳と産後うつについては、必要があり次第できるだけ早く明確なゴールを設定し、専門家のサポートを受けることが本当に大切です。⁵⁶

迷信?本当?

「乳房を手術したことがあると授乳できない」

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迷信です。多くの女性が授乳できます。しかし、経験した手術の種類によります。シリコーンと生理食塩水のインプラントは授乳をしても安全であり、⁵⁷ 外科医は多くの場合、乳腺、神経および乳管の損傷を最低限に抑える技法を使用します。⁵⁸


乳房縮小手術、乳房損傷、もしくは医療的理由に基づく手術を受けたことがある場合、授乳できるかどうかは、切除または損傷した乳房組織の量によります。間違いなく試す価値はありますが、母乳量が減っている可能性があるため、赤ちゃんの体重増加には十分注意してください。うっ滞や乳腺炎になる傾向も高くなる可能性があります。⁵⁹ 不安がある場合は、医師、ラクテーション・コンサルタントまたは母乳育児の専門家にご相談ください。

リマインダー

生まれてすぐに初乳を授乳できたら、たとえ最初だけしか母乳育児できなかったとしても、赤ちゃんにかけがえのないものを与えられています



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