知っていましたか?

母乳を長く出し続けるほど、がんのリスクが下がります

12か月間母乳を出すごとに乳がんにかかるリスクが4.3パーセント低減します。¹⁸⁵ この効果は積み重なっていきます。例えば、3人の子どもがいて、それぞれに1年ずつ授乳していた場合、リスクは12.9パーセント減少します。 


これは、母乳分泌が排卵の確率を低下させたり(早く生理が始まった女性は乳がんになるリスクが高いことが分かっています)、 または、分泌プロセスが乳房内の細胞を変化させて元に戻したり(自然の状態に戻す)するからかもしれません。しかし、現時点では正確な理由は謎のままです。¹⁸⁶


また、これがすべてではありません。具体的な理由は分かっていませんが、1年以上の授乳は卵巣がんのリスクを1/3以上低減します。¹⁸⁷

母乳の謎

母乳育児は骨を強くしますか?


エストロゲンレベルの低下がカルシウム吸収に影響するため、妊娠期と授乳期に骨密度が減ることは普通です。しかし、2011年のフィンランドの研究では、33か月間授乳をした母親の方が(子どもの数に関係なく)、授乳期間が12か月未満の母親よりも骨盤と脛骨の骨の強度が高かったことが分かりました。この測定は女性が授乳を終えてから16~20年後に行われました。研究者たちは、これは低エストロゲンレベルにより骨の外側が成長し、将来的には全体的に大きく強い骨になるからだと考えています。¹⁸⁸ しかし、科学者全員が確信しているわけではなく、母乳育児が骨粗しょう症から身を守るということを揺ぎなく立証するためには、さらなる研究が必要です。

知っていましたか?

授乳は糖尿病のリスクを低下させます

2型糖尿病は世界中で増加傾向にありますが、母乳育児は赤ちゃんが将来的にこの疾患を発症するリスクを低下させるだけでなく、お母さま自身のリスクも最大32パーセント低下させるという良いニュースがあります。¹⁸⁹


妊娠期に妊娠糖尿病になった場合は、将来2型糖尿病を発症する傾向がありますが、完全母乳育児はこうした状況でもそのリスクを低下させます。¹⁹⁰ 日本の最近のある研究では、少なくとも6か月間の完全母乳またはほぼ完全母乳の育児は、妊娠糖尿病であった母親の耐糖能異常を大幅に改善したことが示されました。¹⁹¹

母乳の謎

母乳育児は最も一般的な小児がんの2つであるリンパ腫と白血病のリスクも低下させますか?


18の異なる医療研究を分析したところ、 少なくとも6か月間母乳育児だった子どもは母乳育児の期間が6か月未満またはゼロである子どもよりも白血病を発症するリスクが19パーセント減少することが分かりました。¹⁹²


また、小児リンパ腫に関する最近の研究では、赤ちゃんの授乳期間が長いほど、疾患を発症する確率が低下するということが示唆されています。¹⁹³


まだ最終的な回答を出すにはさらに研究が必要ですが、現時点ではその結果に期待できそうです。

母乳: 栄養を超えて

母乳の成分は、他の人のがんと闘う力もあるのでしょうか?


スウェーデンのルンド大学臨床免疫学科のCatharina Svanborg教授は、あると考えています。


Svanborg教授は20年間、母乳がつくるHAMLET(腫瘍細胞に致死的なヒトα-ラクトアルブミン)と呼ばれる天然成分について研究しています。ラボ実験では、この成分が脳、膀胱、結腸の腫瘍における40種類以上のがん細胞を死滅させました。また、他の多くのがん治療とは異なり、有害な副作用がありません。


Svanborg教授は現在、より大きな研究と試練に移行しています。母乳は治療法になりえるのでしょうか?¹⁹⁴

人生の旅路

1,000日目前後になって授乳をやめるか、2年目以降も授乳を続けるか、どちらを選択したとしても、お母さまは赤ちゃんにかけがえのないものを与えています。


母乳は赤ちゃんに栄養を与え、赤ちゃんを守り、赤ちゃんの身体と脳を構築し、一生の健康のために赤ちゃんの準備を整えています。お母さまが間違いなく赤ちゃんに授けたメリットについて、その一つずつすべてを知っているわけではありません


母乳は毎日を輝かせます。


お母さまにとっても。



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